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2017年5月26日 (金)

こころ 本

 私と先生に年齢差はあるが、隔たるほどの気持ちの差はない。「猫」のように先生は名無しで、私もまたそうなのです。「こころ」仕掛けに、大きな変化はないように見えます。
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 先生に外人の、英語に堪能なインテリの目印をつける。赤シャツで英国帰りの印をつけたように……漱石は前と同じ方法を使います。鎌倉の海水浴場の沖で、二人は同じように愉快になります。
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 私流に理屈をつければスイマーズ・ハイです。言ってしまえば私は先生と、それで心安い仲になる。それを丁寧に、悪く言えば回りくどく進行させます。私は友人に呼ばれ鎌倉に行く。友人は都合で帰り、無聊を囲った私は先生に目をつける。
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 この先生は統合失調症なのか同性愛なのか? 甘えるのが下手なだけか、友情を育むのに失敗したのか? どちらにしても先生の精神的な危機は、やがて私にも押し寄せそうに見える……私の友人は家族に呼び出され、私を置いて帰ったようにネ。
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 漱石は生まれるとすぐ養育費を付けて外に出され、長男次男が無くなると呼び戻されます。夏目家の正家族でなく猫のようなスペアとして……その辺の不条理感が話に滲み出します。家族が身障者になると、たとえば長男が身障者になると、家族は次男をだんだん長男扱いにしていく。
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 奥さんが亡くなると父は長女に奥さん役を振っていく。実質で次女が長女のように先に嫁に行き、長女は嫁に行かず後家のように、ずっと家を取り仕切り続ける。個人個人に平等な権利があるのでなく、家の都合が優先されると、ついそういう事も起きます。
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 漱石は身障者だったのか? そうではないが似たようなモノでした。ひとり後妻の子だったし、産まれた日も縁起が悪かった。写真に伝わるハンサムな顔は、あれは修正された写真で鼻に痘痕の痕があった。背も低く160cm「菫ほどの小さき人に生まれたし」の句を詠みます。
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 ややもすると自閉的になる。先生の奥さん、静は少し酒でもと提案してます。漱石は下戸でした。それでしるこが好き、ジャムが好き、ピーナッツが好き……食いすぎる傾向にあります。坊ちゃんでは蕎麦を食い過ぎるシーンを書いてます。食べた時だけハイになるんです。
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 「猫」とかユーモア小説だった頃はギャグを決める快感もあったが「こころ」では書く快感はどうか? 漱石は熊本では散歩をしています。熊本市内から小浜まで歩くのだから散歩の域を超えてる。若い頃はランナーズ・ハイ、歩く快感でバランスを取ったと思われます。
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 だが歩かないで食べるだけ食べれば、どうなるか? 熊本震災後、日に2度、炊き出しが出て2カ月以上、人によって違いますがじわじわ太る事になります。私もプールや筋トレは出来なくなって、食べるだけ食べました。
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 東京での漱石はバイオリンの練習とか絵ハガキを描いたりはしますが……ランナーズ・ハイまでも歩くことは、もう出来ない。そういう意味で漱石は大患後、急激に老いたと思われる。そうでなくとも健康を損ない死を意識すると、本書のように楽しい場面は少なくなる。続く。

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