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2016年12月 6日 (火)

新海式レンアイにおける合理と矛盾 2

Sinka

 秒速の1章「桜花抄」はなぜかケータイがない設定で、ケータイでのコミニケーションは出来ない。疑似家族を恋愛に替える、キスまでの距離を埋めることは出来た。だがセックスまでの距離は埋まらない。
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 これには理由があるべきです。2章「コスモナウト」でタカキはケータイを持っており、謎のメールを打っている。明里に向けられて見えたメールは、そうではないと明かされる。つまりタカキは作者を目指して習作を書いていた。
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 手術を控えていた。私は来週でA子はその次の週だった。電車の揺れに意を決したのか「不安ではないか」とA子は聞いてきた。手術は初めてか、私はト聞いた。
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「大丈夫だよ」私はA子の手に手を軽く重ねた。すぐに離したがA子がそうしなかった。指を重ねてきた。指と指を組んで、それから私は初めての手術の時の話をした。手術は淡々と進むものだト……
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 A子は目を見張り「来週も家族は来ないの?」聞いた。来ても来なくても手術するのは私自身で、家族ではないいう意味のことを話した。私の中で細い指がこわばりる。電車の外で変わる風景の反映に、A子は動揺していた。
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 明里は文学の国でタカキという家族を得ようとする。だが本当にそうするには、現実家族を捨てなければならない。そうするとボカされた明里の家族は急にくっきりし始める。
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 大学を卒業すれば大抵は就職する。同棲した男女は別れるか結婚するか、その先を決めなければならない。かりそめの家族を続けるか否か? それがリアルな恋愛の意味になる。と見ると新海の本音と、作品の虚構がチラついてくる。
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 貧乏な癖に自意識が高い、それで会社を辞めてしまう。タカキの立場や性格は新海の反映ではない。やはりファンはノンフィクションを期待し、どこまでが実体験かと、新海に質問をしたそうな。
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 新海は建設会社の息子で、早い段階からパソコンも買い与えられた。そういう裕福な家族の中にあって、タカキは更にその上を目指す存在です。その事が頭から離れない……つまりタカキの立場は、明里のような庶民ではない。
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 物語は対等な庶民の恋愛ではなく、身分違いの、そういう意味が裏側を進行して行く。今年の桜を一緒に見る恋人たちは、来年をもと誓うが、タカキは誓ったりしない。明里も子供の頃から、そこを承知の上です。
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 もう会えないのではなく、もう会わない。私は何度も手術していたし、A子のように今回で最後でもなかった。回数を数えるのも嫌になり、宗教的な支えもいらない思い……かといって指の感触にも感動しない。
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 あの友人は同居人に「寂しくって仕方がないから」ト同居を迫ったのだそうです。「お前はプライドが高すぎる。寂しい時は寂しいと言え」友人は言いました。確かに私は余裕もないのに余裕を作り、A子に「大丈夫だよ」とだけ繰り返しました。(次回完結)

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