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2016年11月 1日 (火)

ストレイシープ

Helio

 男女の出合いから結婚約束までを集約したのが、「君の名は。」映画だから、それでひとつ解決するが、現実はそうはいかない。結婚後は二人で家庭を取り仕切る必要があるからです。
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 夏目漱石は29才で見合結婚したが、恋愛体験はまだだった。なぜなら正岡子規との文通が続いており、その後は俳句友達になる寺田寅彦との出会いにより、一挙に句多作家となる。
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 これは一種のラブレターと解釈できます。職業として小説を書きだしてからも、木曜会などというお集まりを催し、男子会での交流を深めます。「こころ」の最初の方に先生は語り手、私と出会います。
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 先生と私の関係は漱石と寺田の関係と相似形、こころも先生と奥さんの関係より、先生と私の方が濃密に書かれる。異性に近づくのが怖いので、その前の段階として男に近づく。
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 という先生の小説内の指摘もあります。漱石は関係の薄かった母の代用に奥さんをもらい、もう一方で同性関係を形作った。それは「坊ちゃん」と「三四郎」の似た構造を比較すると、判ります。
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 坊ちゃんは清の他、誰とも有効な人間関係を作れない。三四郎は與二郎の他に、美禰子と関係を作ろうとして失敗します。その過程でヘリオトロープだのストレイシープだの、謎の横文字がいわれる。
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 坊ちゃんという設定は三四郎に変化します。いうまでもなく與二郎のモデルは子規です。この他、三四郎は木曜会にやって来た森田草平の心中未遂事件の告白を聞いて、変化アレンジした。
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 そう見ると美祢子は平塚らいてうに重なります。しかし「三四郎」には心中シーンは見当たらない。クライマックスが菊人形の見に行って迷子になって、三四郎と美祢子が二人きりになる。ストレイシ-プの問題シーンが心中を暗示するのでしょう。
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 迷いでは死ねないので美祢子は別の相手と結婚します。キスシーンも何もなくてつまらない……ご批判ごもっとも、しかし時代は明治、後の渡辺淳一さんのようにラブシーンは書けませんよ。
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 漱石なりには書いてます。「三四郎」の終わり近く三四郎が風邪をひき熱を出します。それで美祢子に言われ、女友達が見舞いに来ます。男一人の部屋に女性が一人、ミカン持って来る訳はないんで。
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 それも皮をむいて食べさせる。熱っぽい唇に甘い果汁がしたたる。そのシーンを漱石は細かく書いてます。これがベッドシーンの代わりではないか? 私はそう疑っています。
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媒煙。森田草平の小説。1909年(明治42)「朝日新聞」連載。作者と平塚らいてうとの心中未遂事件をもとにして、近代青年と新しい女性との情熱的な恋愛を描いた自伝的作品.

画像は三四郎に出てくるヘリオトロープという香水。

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