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2012年1月21日 (土)

こびりついた記憶

Sika歯科に行きます。前の歯科医は私より年上で、あまり患者の口の中をシゲシゲ見ない方でした。ここの歯科医は年下で目がいいのか、針穴のような小さな虫歯を見つけます。

 

「どうしますか?」早く処置するに越した事はありません。無論お願いします。レントゲン映像で深さを確認し、ドリルを当てる訳です。まあ誰もが好きになれないアノ感触が……

 

その前に麻酔は「どうしますか?」とも聞かれます。ドリルを使う時は、今みんな麻酔を使うようです。私は反射的に「使いません」と答える。そして答えた後てしまったと思う。

 

大抵は取り返しがつきません。

「どうしても痛かったら使うと言うことで……」慎重な言い回しでそれから、やっぱりドリルになります。まあ針穴の虫歯でもチョコっとは結局ドリルです。

 

しかし私にはドリルの感触に誘発される記憶があります。

 ――セ、先生、イタ、痛いです。

 「麻酔を追加しますか」看護士の女の声がして、

 

「イヤ、いいだろう。続ける……hata君、もうちょっとだから我慢してなあ」そう主治医の声がする。手術室に電機機器の音がする。

 

ドリル状の機器が股関節を刻んでいる。振動は私の内側から響く……これが私の20才の頃の記憶です。記憶はフラッシュバックで帰って来る。ふいに寒気がして私は震え出す。

 

高窓に揺れていた木の葉は春の緑色だった。なぜか若い看護士の二の腕が見える。記憶は急に夜になり、特看室の足の高いベッドの中になる。春の寒さに震えている私の、すぐ横に歯の治療椅子があって、そこには老いた方の私がいます。

 

……機器の音は、いつの間にか歯科ドリルになっている。私のトラウマはそういう風なものです。歯科の治療に麻酔が必要か必要でないか、そういう話ではありません。

 

忘れたと思った記憶が、いきなり帰って来る。感覚はしばらく消えない。歯科医院の窓の外は冬、モニターTVの反映に見える私は、確かに老人、こちらが現実でです。それから歯科医師はいう。

 「もう一本は、この次でいいでしょう」悪夢は次回まで続く……らしい。

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