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2009年2月22日 (日)

木村多江さん

Tae 実の所、何も見てはいない。単に見たような気になったのであります。本年の日本アカデミー主演女優賞は「ぐるりのこと。」木村多江さんです。何年か前に……もう十何年になったかもしれませんが……最初にCMで木村さんを見かけた時は清冽でしたねえ。

その清冽が、顔の印象ではなく、怪しむとやはりそうで再見すると陰りがあって整って、いい具合に和風で、でも顔そのものではない。顔が出るまでの身体の動きのなめらかさが印象的でした。俳優とは歩く動きと走る姿が基本であります。

一歩動いた自分に意味をつけ、印象づけるのは至難であり、それが出来る俳優は並みではない。今から昔の印象を文章に起こすとそういう事になりますが、果たして私がそう観ていたのか、どうか? はたして……書き出しの1行のようにそれは怪しい。

木村さんの受賞映画は観ておりません。もっと長いドラマで木村さんを観たのは「雨と夢のあとに」という深夜の連続ドラマでした。ここでの主役はすでに死んでおり、死んだ自分に気がつかず、いまだこの世を左往する、幽霊の話です。

時間帯から低予算枠、ずいぶん怪しいドラマであります。その主役の隣人で、主役の娘のお節介をやいている内に、主役に恋愛感情を持ってしまう……後に自分も幽霊と告白に到る。思い出して書いている間に、私も訳が判らなくなって来る。

そういうドラマの演技でした。何という事のない気のいい女性を演じて見せて、自分の部屋にもどる。もどって一人になった時にふいに見せる顔が難しかった。木村さんとしては、その一瞬に自分が幽霊である、この世の未練を演じなければならない。

この世への未練を一瞬の表情で表せます? 幽霊になった事がないって? いえ、あなたも幽霊です。あなたが30代とすれば、もう20代には帰れない、20代からの幽霊であります。私は60才ですから50代の幽霊で、兼任40代の幽霊であります。

ただし、昨日に未練はありません。どんな日々にも若さにも、終わってしまえば何もなかったのと違いはなく、あとは忘れてしまうだけ、化けて出る甲斐性なんてありません……それでも人は過ぎた昔の幽霊です。振り返っても返らなくても。

誰もが帰る所のない幽霊です。やり残した事の未練あるかないか、それは知りませんが、人前ではともかく一人になれば心は翳る。若くはないデビューでやっと役にありついた。木村さんの素顔も透けるようでドラマは悪くありませんでした。

木村さんは初ノミネートで即受賞、うれしそうでした。もう若くはない女性の顔の、すでに清冽を通り越し妖艶の域に入ったその顔と、トロフィ像との間を擦り抜けて行く、あのドラマの幽霊を見たように思ったのは錯覚でしょうか?

写真は雑誌NAVIによります。それからYoutubeで見る木村多江CM集。清冽な陰のある頃はなく、ジイサン殺しの妖艶ばっかりですけどね。

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