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2009年1月10日 (土)

唐さんの事なら

唐さんの事なら用意があります。団塊の世代で唐十郎も寺山修二も鈴木忠志も知らなければ、それはモグリというもので、別に演劇にかぶれてなくとも、赤テント黒テントは知っていたのです。年末の深夜映画で「シアトリカル」というドキュメンタリがあって……

演劇的という意味の映画、いうなれば「行商人ネモ」のメイキングオフです。それを観て書いておこうという気になりました。昔、アンダーグラウンドを略してアングラと言ったのですが、新派新劇に対してのアングラ芝居の代表が唐さんでした。

さらに新劇が規制の台本を使ったに対し、唐さんは台本を自分で書くわけです。私が観たのは「風の又三郎」73年くらいと、もう一本は「ユニコン物語」か、定かでありません。唐さんは貧乏体験があって今もノートに小さな文字の横書きで書くそうです。

作家は下書きをせず、データマンと言われる調査を使うのが普通です。そんな事の出来ない弱小で、誰とは言いませんがネットで検索をする人もありますです。唐さんは長崎の島を「西南端だよな」と聞きます。周囲に唐組のスタッフや俳優がいて、聞く訳です。

ネモがいた長崎、それを日本、最南端と修飾したい。こだわりは偏執的です。悪く言っているのではありません。それが面白さに変化していく……唐さんは舞台を踊るように動き、歌うように話す。そのセリフと動きは内に内にと向かっていく。

まあ役者に夢中になるのは女性の特権、私は男、それと判るだけで夢中にはなれません。唐さんは小山の大将、山がなければ輝けない。たとえば商売道具の赤テントが古くなって、痛んだ時も自分では工面できなかった。

察して赤塚不二夫さんが750万円出したそうです。ホントは気が小さいと思います。公演前に客の行列を見に来る。誰かと連れ立って何処かに行く素振りで、客種を見て覚悟を決めるらしい。夜叉奇想だったか熊本が初演でした。

客を見ても覚悟が決まらなかった。時間になってもテントが開かない。私は係に聞きました。係は、
「座長がゴネてるらしいの。女の割合が多すぎる。俺の芝居は娘っ子に見せるもんじゃねえ……って!」私が大げさに肩を落とすと係は声を出さずに笑いました。

映画の中でスタッフが不用意に唐さんに聞きます。
「役者って何だって……俺は出てくる」唐さんは突然、出かけます。カメラはそれを追います。洗濯機のある部屋、組の水周りある部屋の奥に、唐さんは入って行ってシャワーを出す。

服のままシャワーを浴びる、唐さんの姿をカメラが追う。
「これが役者だ」濡れた顔でいう唐さん。部屋から唐組のメンバーが追ってきて、唐さん唐さんと口々に声をかけます。
「おい、お前たちも浴びろ」
メンバーは服を脱いで、シャワーするんですがネ。つまり唐組の中では唐さん絶対な訳です。

唐さんの一挙手一投足を支える形で演劇が成立します。熊本に来た時も子飼橋のあたりでテントを張りました。夕暮れの頃にテントを跳ね上げ、白川の風景を芝居に取り込みます。向こう岸から三下役の俳優さんが走って来るのです。

ド肝を抜かれて客は拍手をします。そのジャブジャブという白川の水音が凄まじく記憶に残っています。芝居のタイトルは消えましたけどね。偏執的はいいとしても、あまりに回りにツケを回すのは、どんなものかと思います。あれ以来、私は唐さんの芝居を見ていません。

行商人ネモ BS2 9月1日(土) 午前0:05〜2:05(31日深夜)
長崎県の生月島にある紳士服店「フタタビ」に勤めていたネモは、ジュール・ヴェルヌの書いた小説「海底二万里」をこよなく愛する男。ある日「フタタビ」は大手のスーツ屋に買収されてしまいます。会社とその仕事に誇りを持った人々も去り、ネモも退職金代わりにズボン75体を持って生月島を後にするのです。75体のズボンと共に旅に出たネモは流しの縫いっ子・松浦ミシンと東京・何処横丁で再会します。ミシンは発注ミスをしてきわどい償いを迫られる友人の身代わりを申し出てこの横丁にやってきたのでした。一方ネモは、かつて勤めていた会社「フタタビ」の宣伝部のボードビリアン・舌巻や会社に出入りしていたハンガー業者のエリマキトカゲらと巡り会います。75体のズボンを行商し続けるネモとミシンの前に「フタタビ」の買収元であるエリツキ達が現れ、そのズボンを売らすまいと立ちはだかるのでした。
(井の頭公園内 木もれ日原っぱ・2007年)作・演出:唐十郎
出演:唐十郎、十貫寺梅軒、鳥山昌克、久保井研、辻孝彦、稲荷卓央、藤井由紀、赤松由美、丸山厚人、多田亜由美、高木宏 ほか

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