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2006年3月26日 (日)

クロサワ・ミステリー 終章

私たちは尊敬できる人について行きたい。そうであれば何処であってもいい、そう思っています。黒澤はすべてを知っていたのでしょうか? 違うのではないか。何も知らない、どうしたらいいのかさえ判らない。そんな黒澤を映画の中で見たことはありませんか?

黒澤は脚本を自分で書くのです。人にもよりますが任せる監督もいます。撮影前に演出をします。細かい動きに注文をつける。役者の演技プランはやらせない。衣装を揉むんです。くしゃくしゃになって着古した感じが出るまで揉む。セットの床板をみがき、柱に糠雑巾を掛けるのです。やり過ぎと思いません?

じゃないと撮影やらない。しょうがないから、みんな床を磨き衣装を揉むようになるのです。撮影は何日、予算は幾ら、決まってるのに守らない。それで東宝は黒澤にプロダクション作らせて契約にしちゃう。そうしないと際限なく伸びちゃうんです。

米国とうまく行く訳がない。そうでしょ(笑)あそこはビジネスの国です。芸術もビジネスです。芸術は普通の10倍、時間食うんです。10倍金がかかる。なぜかかる、命掛けるからです。黒澤映画の衣装はそよぐ一秒に命がかかっています。床柱の光具合に黒澤の命がかかっています……ちょっと大げさかな(笑)
ま、それくらいのモンです……しかし逆にいうと、どこで手を抜くか判ってないんです。

七人の侍は、入れ子になっていて竹千代が命がけで百姓から侍になる話です。勘兵衛も命をかけるが百姓にはなれない。仕事を終えると村からはじき出される。最後のセリフ「また負け戦だったな。勝ったのは百姓だ、俺達ではない」意味のことをいう。そして寂しく去っていく。

虎の尾を踏む男達もそうなっています。エノケンが一人、残される。影武者も戦いが終われば、生きたか死んだかさえ判らないまま、川を流れます。映画の隆盛期に合わせて、娯楽映画としても見られる映画にはなりました。黒澤は元々、私たちに合わせる監督ではなかった。終わりは一人消える、そういう人です。

乱は黒澤の死を描いた映画で、影武者は死の後を描いたといえば判り易くなりましょうか。もしトラトラトラがうまくいってヒットしてアカデミー賞でも取れば、世界の黒澤になれば状況は変わったでしょう。だが黒澤が大脱走やコーラスラインを撮ったとは思えない。

やがては人はどうすれば死を受け入れるか。「生きる」のような暗い映画に帰ったと思います。早かれ遅かれネ。自殺未遂を予感させるものは初期の映画からあります。むしろ映画の撮り方が判らないから衣装を揉み、柱を磨いたのではないでしょうか?

どうしていいか判らないから人について行きたいんです。悩まなくとも済む。黒澤もそうで、映画では監督以上に偉い人はいない。とりあえず衣装をもんだト私は思います。黒澤組は監督が過剰に指導する体制です。その結果として、ついてこい体制になると思う。何かが予め判っているんじゃありません。

いい映画は他にもある。しかし小学生でもよさが判る映画は黒澤以外にあまりないです。何が美しいか、何が正しいか、どうすればいいか、手を取って足を取って教えようとします。天国と地獄で、その親切心を失くしますがね。

日本は敗戦、この体制はうまくいった。裕次郎も似ている。優作も似ている。本人はからっぽ、元々は、誰でもそうです。宗教的基盤がなくて愛国心の基盤が薄い、そういう意味では特に人間がからっぽなんです。そこがしっかりしている米国が何をしているか……

黒澤には大きな劣等感があったと思います。それが何かは知りませんが、映画で感じます。それが過剰な表現を生み、いい方向にもつながった。そして悪い方向にも……黒澤は基本的に漱石やダ・ビンチと同じ匂いがします。

私は人と違う生き方をしています。それは毎日の日常をあまり重視しない生き方です。映画は現実より美しい。美術品は純金より重い。車は走る物でなく、止めて桜を愛でるもの。七城米よりモカマタリが好き。女性の声より楽器の音色が気になる……ホントかい?

それは身障者という生き方です。健常者の生き方は参考になりませんでした。あなたの生き方が間違っているなんて言いません。私は何も教えられない。あなたの生き方は自分で作るしかない。でも迷ったら私を見て下さい。目安になるでしょう。声をかけて下さい。返事で方向くらい判るでしょう。

私は社会の中で、そういう役割を果たしたいと思っています。お疲れさまでした。

米映画で「海辺の家」という地味な作品があります。私はこれ「生きる」のリメイクだと思います。
七城米は熊本で高級米といわれている米のこと

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コメント

内容に対するコメントというより・・。hataさんがこのログを書くのに、どれくらい時間を費やすのか想像するしかありませんが、すごく良いログだと思います。研究もされてるし、もちろん独自の見解も入ってる。客観的でもあり、主観的でもある。情報量もちょうどいい。僕の気紛れなログが恥ずかしいですよ(笑)本来、ログってこういうものかもしれませんね。多くの人に読まれるのを祈ってます。黒澤に関しては、神聖化してしまった日本の大衆(メディア)も良くないと思います。黒澤の監督ということを知らずに映画を観たほうが素直に感銘出来そうです。少なくとも僕は。

ちょっと書くつもりが、こんな事になってしまいました(笑)クロサワの魔力はコワい。もう書きません。アッシュさん繰り返しになりますが、このブログは情報データベースのつもりで始め、ちょっとずつ色気を出しただけです。これ書かないとしてもデータ集積はしていましたから、お受けになってる印象ほどはありません。フェイマスさんアッシュさんの所で読みました。不具合はポータルにいいます。27本の黒澤を楽しんで下さい。私にはそれはもう出来ません。お楽しみのきっかけになれたのなら幸せです。また気が向いたら立ち寄り下さい。

おもしろいアクシデントでしたね。コメント関係、問題ありません。  お陰さまでちょっと良くなりました。ウツですな。 はは!  ありがとうございます。オープンカーが欲しいなあ。

どこに何しに行くんですか?あまり色々ほしがっても仕方ない。昨日は迷惑かけました。私の方に用の方のコメントで驚きました。いやあ、ウイルス感染したかと思いました。サイトの方で対応すると思います。

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